【院長コラム】気づかないうちに子供の歯並びを悪くする「日常の悪習癖(クセ)」とは?
「特に変わったことはしていないのに、なぜかうちの子の歯並びが気になる…」
そんな疑問をお持ちの親御さんは多いのではないでしょうか。
前回のコラム「子どもの歯列矯正は何歳から?4歳から始めるメリットと治療の流れ」では、小児矯正をスタートする適切なタイミングについて詳しくお話ししました。
実は、この「何歳から始めるべき?」という疑問の答えに深く関係しているのが、お子様が毎日なんとなく行っている「口の癖(口腔習癖)」です。
「えっ、口呼吸や指しゃぶりといった日常のクセが、歯並びの乱れの原因になるの?」と驚かれるかもしれませんが、これらは気づかないうちに歯列や顎の成長に大きな影響を与えていることがあるのです。今回は、子どもの歯並びを悪化させる代表的な悪習癖と、その影響・対策について詳しく解説します。
歯並びは「癖」で変わる?口腔習癖とは
口腔習癖とは、日常的に繰り返される口や舌の無意識な動作のことです。一回一回は小さな力であっても、毎日長時間にわたって続けることで、顎の骨や歯列の成長方向に影響を与えることがあります。
子どもの骨は大人に比べてやわらかく代謝が活発なため、悪習癖による外力が顎の成長方向を変えてしまいやすい側面があります。このことが、小児期の習癖を放置することが歯並びに影響を与えうる理由のひとつです。

子どもの歯並びを悪くする6つの代表的な悪習癖
① 指しゃぶり
乳幼児期の指しゃぶりはよく見られる行動ですが、4~5歳以降も続く場合は注意が必要です。指を口の中に入れることで、上の前歯が前方へ押し出され、下の前歯が内側へ倒れます。また、指によって歯列が左右から圧迫されるため、歯並びの幅が狭くなる(狭窄歯列弓)ことがあります。
主な影響:出っ歯(上顎前突)、前歯が噛み合わない(開咬)、歯列の幅が狭くなる
② 口呼吸(お口ポカン)
近年、特に問題視されているのが「口呼吸」です。テレビを見ているときや寝ているときに、お子様の口が開いていませんか?
舌は本来、上あごに接した位置にあることで、歯列や顎の発育バランスに関与しています。しかし口呼吸では舌が下がった状態(低位舌)になり、この内側からの力が失われてしまいます。その結果、頬や口周囲筋との力のバランスが崩れ、上顎の幅が狭くなる傾向がみられることがあり、歯がきれいに並ぶためのスペースが不足しやすくなります。
主な影響:出っ歯、歯のガタガタ(叢生)、顔が面長になるアデノイド顔貌(口呼吸と関連するとされる面長傾向の顔貌)、さらには睡眠の質の低下や姿勢の悪化
また、鼻でフィルタリングされない冷たく乾いた空気が喉を刺激するため、扁桃腺の肥大や風邪・アレルギー疾患につながりやすいとも言われています。
③ 舌突出癖(舌を前に押し出す癖)
食べ物を飲み込む際や話すときに、無意識に舌を前歯の間に押しつける癖です。舌は非常に大きな筋肉であり、その力が毎日継続的に前歯に加わることで、前歯が前方に押し出されたり、上下の前歯が噛み合わなくなったりすることがあります。
主な影響:前歯が噛み合わない(開咬)、すきっ歯、サ行・タ行の発音の不明瞭さ
④ 咬唇癖(下唇を噛む癖)
下唇を上の前歯と下の前歯の間に挟んだり、噛んだりする癖です。無意識にやっているお子様も多く、特に緊張しているときや集中しているときに出やすい傾向があります。
主な影響:上の前歯が外側に傾いて出っ歯になりやすく、下の前歯は内側に倒れてガタガタになりやすい
⑤ 態癖(頬杖・横向き寝などの姿勢の癖)
「態癖(たいへき)」とは、姿勢に起因する顔や顎への持続的な圧力のことです。机に向かうときの頬杖や、いつも同じ方向を向く横向き寝、うつ伏せ寝などが該当します。体重という非常に大きな力が毎日長時間にわたって顎の片側にかかり続けることで、顎の形や歯列に左右差を生じさせることがあります。
主な影響:交叉咬合(上下の歯列が左右でずれた噛み合わせ)、顔のゆがみや左右非対称
⑥ 爪噛み・鉛筆噛み
爪を噛む癖や、鉛筆など硬いものを口に入れて噛む癖も、特定の歯に繰り返し強い力を加えます。
主な影響:特定の歯の咬耗(すり減り)や歯列不正の一因となることがある
「お口ポカン」が引き起こす全身への影響
悪習癖の中でも口呼吸は、歯並びだけにとどまらない幅広い影響を持つため、特に注意が必要です。
- 【睡眠・脳への影響】:口呼吸が習慣化すると、舌が下がり気道が狭くなりやすくなります。その結果、夜間のいびきや、子どもの睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関連することがあります。睡眠の質が下がると、日中の眠気や集中力の低下、落ち着きのなさといった問題として現れることもあります。
- 【顔貌(かおかたち)への影響】:口呼吸が続くと、顔が面長で下顎が小さく後ろに引いたように見える「アデノイド顔貌」様の顔面成長パターンと関連することがあります。常に口が開いているため、唇が乾燥しやすい状態にもなります。
- 【免疫・体への影響】:鼻呼吸には、空気中のウイルスや細菌を除去するフィルター機能があります。口呼吸ではこのフィルターを通さないため、のどの粘膜が刺激を受けやすく、扁桃腺の肥大や感染症のリスクが高まる可能性があります。
- 【姿勢への影響】:口呼吸で気道を確保しようとすると、自然に頭が前方に突き出す姿勢になります。これが猫背やストレートネックにつながりやすく、全身の姿勢バランスに影響することがあります。

こんなサインはありませんか?家庭でできる習癖チェックリスト
以下のようなサインがある場合、口腔習癖が影響しているかもしれません。
- テレビを見ているときや寝ているとき、口がぽかんと開いている
- 食事中にクチャクチャと音を立てる、または飲み物で食べ物を流し込む
- 話し方がはっきりしない(特にサ行・タ行の発音が苦手)
- いびきをかいている、または夜中に何度も目を覚ます
- 特定の指に「吸いだこ」がある
- 頬杖をつく癖がある、いつも同じ方向を向いて寝ている
- 爪を噛む、鉛筆など硬いものをよく口に入れている
一つでも当てはまる場合は、早めにご相談されることをおすすめします。
まとめ:日常の「なんとなくの癖」こそ早めにチェックを

子どもの歯並びに影響を与える口腔習癖は、「特別なこと」ではなく、毎日の生活の中にごく自然に存在しています。だからこそ、保護者の方が「なんとなく気になる」と感じたサインを見逃さないことが大切です。
顎の成長が完了する前の早い段階でご相談いただくことで、お子様の歯並びや顔貌の正しい発育をサポートできる可能性が高まります。
りえこ歯科・矯正歯科クリニックでは、単に歯並びを整えるだけでなく、お顔の筋肉の働きや普段の姿勢、身体のバランスまでを含めた総合的なアプローチで、お子様の正しい噛み合わせと健康づくりをサポートしています。
当院は院長を含めスタッフ全員が女性であり、育児経験豊富なスタッフも多く在籍しております。「うちの子、こんな癖があるけど大丈夫?」「歯医者さんが苦手だけど治療できるかな…」といった些細なご疑問やご不安でも、ぜひお気軽にご相談ください。
お子様の健やかな成長のために、今日から一緒に取り組んでみませんか?
【関連リンク】

