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【院長コラム】子どもの歯並びは「噛む力」も大切!咀嚼と食育について解説

「うちの子、あまり噛まずに飲み込んでいる気がする…」「柔らかい食べ物ばかり好んで食べる」 そんなお悩みをお持ちの親御さんは多いのではないでしょうか。

前回のコラム「歯並びを整えるだけじゃない!MFT(口腔筋機能療法)で叶える健やかな成長」では、舌や唇の使い方といった口周りの筋肉の癖が歯並びに与える影響についてお話ししました。

実は、毎日の「食べ方」そのものも、歯並びや顎の発育に大きく関わっています。今回は、「咀嚼(そしゃく)」と「食育」が子どもの成長にもたらす影響について、歯科医師の視点から詳しく解説します。

子どもが「よく噛まない」「丸飲みする」主な原因とは?

具体的に食育のお話に入る前に、なぜ最近のお子様が「あまり噛まない」ようになってしまうのか、その主な原因を見ていきましょう。

  • 柔らかい食事が中心になっている: 現代の食生活は柔らかく飲み込みやすいメニューが増えています。
  • 食事の時間が短い・忙しい: 習い事や生活リズムの影響で、ゆっくり噛む時間が確保しにくい傾向があります。
  • 「ながら食べ」をしている: テレビやスマホを見ながら食べると、噛む意識が散漫になります。
  • 口呼吸や口周りの癖がある: 鼻づまりなどで口呼吸になっていると、息苦しさから噛まずに早く飲み込もうとします。
  • 食事の姿勢が安定していない: 足が床につかずぶら下がっていると、噛む時に力が入りにくくなります。

心当たりのある項目はありましたか?続いて、適切な咀嚼が顎の発育にどのように関わっているのかを説明します。

咀嚼が子どもの顎の発育に与える影響

現代の子どもは柔らかい食べ物を好む傾向があり、昔と比べて咀嚼回数が大きく減少していると言われています。

  • 上あごの成長は、そのほとんどが小学生の時期に進みます。
  • この時期にしっかり噛む習慣がついていないと、顎の発育に必要な刺激が不足し、永久歯が並ぶスペースが十分に確保されにくくなる要因の一つと考えられています。

噛むことによる適度な物理的刺激は、歯周組織を通じて顎の骨や周囲の筋肉に伝わり、正常な発育を支えると考えられています。咀嚼不足が続くと、歯が並びきらずに生じる「叢生(そうせい)」や、上あご・顔の中央部分の発育不足を招く要因のひとつになるとも言われています。

前歯を使う「噛みちぎる」動きも大切

あらかじめ一口サイズにカットされた食事は、前歯を使う機会を奪いがちです。前歯で食材を「噛みちぎる動き(咬断運動)」を日常に取り入れることは、顎の健全な発達や、口周りの筋肉の働き(口腔機能)の向上につながるとされています。

「ひみこのはがいーぜ」に見る、噛むことがもたらす効果

日本咀嚼学会は、咀嚼のメリットを「ひみこのはがいーぜ」という標語でまとめています。歯並びだけでなく、お子様の全身の健康にも関わる大切な習慣です。

ひみこのはがいーぜ 咀嚼の8つのすごい効果
  1. ひ:肥満予防 — 満腹中枢が刺激され、食事時間が延びることで食べ過ぎを防ぎます。
  2. み:味覚の発達 — 食べ物が細かく砕かれ唾液と混ざることで、素材本来の味を感じやすくなります。
  3. こ:言葉の発達 — 口周りの筋肉が鍛えられ、発音の明瞭化や豊かな表情づくりに役立ちます。
  4. の:脳の発達 — 咀嚼によって脳への血流が増え、脳の働きに良い影響を与えることが報告されています。
  5. は:歯の病気予防 — 唾液の分泌が促進され、自浄作用・再石灰化・緩衝作用が高まり、虫歯や歯周病の予防につながります。
  6. が:がん予防 — 唾液中の酵素の働きに関する研究が進められています。
  7. い:胃腸の働き — 食べ物が細かく砕かれることで、胃腸への負担が軽減されます。
  8. ぜ:全身の体力 — 歯をしっかり噛み合わせることで全身に力が入りやすくなり、集中力や体力の向上につながります。

歯と骨を育てる栄養管理

カルシウムだけでは足りない?栄養素の相互作用がカギ

丈夫な歯と骨を育てるには、カルシウムだけを意識しても十分な効果は期待できません。複数の栄養素がバランスよく働き合うことが大切です。

  • カルシウム: 歯のエナメル質や骨の構造を支える主成分
  • ビタミンD: 小腸でのカルシウム吸収を促進。日光浴で体内合成も可能
  • ビタミンK2: 骨形成に関与。納豆などに豊富
  • マグネシウム・リン: カルシウムとともに骨の硬度や強度を保つ
  • ビタミンC: 歯茎や骨を支えるコラーゲンの生成を助ける
  • フッ素: エナメル質の耐酸性を高め、再石灰化を促進する

吸収率を高める食べ合わせの工夫

ビタミンDやK2は脂溶性のため、ごま油やオリーブオイルなどの油と一緒に摂ることで吸収率が高まります。焼き鮭・納豆・小魚を組み合わせた和食は、歯と骨の健康を支える理想的なメニューのひとつです。

今日から始められる「噛む力」を育てる食育のポイント

① 食事の姿勢を整える

足の裏がしっかり床につくことで姿勢が安定し、噛む力を発揮しやすくなります。足がぶらつくお子様には足台の利用がおすすめです。

② 「流し込み食べ」に注意する

食事中の適度な水分摂取は問題ありませんが、噛まずに水やお茶で流し込んでしまう癖は、よく噛む習慣の妨げになります。

③ 噛み応えのある食材・調理を選ぶ

  • 大きめのお肉やリンゴなど、前歯で噛みちぎる「カジリ取り」メニューを取り入れる
  • 食材を大きめに切る、根菜・きのこ・海藻など繊維質の多い食材を増やす、煮込みすぎない
  • オムライスやカレー、ハンバーグなど、柔らかい「子どもが好む食べ物」ばかりに偏らない

④ 「噛ミング30(カミングサンマル)」を意識する

厚生労働省は「一口30回以上噛む」ことを目標として推奨しています。一口ごとに箸を置く、テレビや動画を見ながらの「ながら食べ」をやめるといった工夫が効果的です。

ご家庭でできる、咀嚼機能チェックリスト

以下のようなサインがないか、ご家庭で注視してみてください。

  • クチャクチャと音を立てて食べる
  • 水やお茶で流し込むように食べている
  • 姿勢が崩れている、または食事中に足がぶらついている
  • 前歯をほとんど使わずに食べている

一つでも当てはまる場合は、食べ方やお口の機能を一度見直してみるとよいでしょう。早めの食習慣の見直しが、より自然で安定した歯並びの獲得につながります。

矯正治療の安定にも咀嚼習慣が関わっている

矯正治療できれいに並んだ歯並びも、原因となる習慣が改善されなければ「後戻り」のリスクが残ります。そのため、歯並びの乱れの要因となり得る「咀嚼・呼吸・嚥下・姿勢」といった口腔機能全体へのアプローチが重要視されています。咬合力検査などの客観的な評価は、お子様の状態を保護者の方にご理解いただくためにも有効な手段です。

咬合力測定装置
MFT口腔筋機能療法器具

まとめ:噛む力は、子どもの未来への投資

りえこ歯科 院内キッズコーナー

咀嚼は、単に食べ物を細かくする動作ではありません。顎の健やかな発育、歯並びの安定、そして全身の健康を支える、成長期のお子様にとってかけがえのない習慣です。

姿勢を整える、流し込み食べをやめる、噛み応えのある食材を取り入れる。日々の小さな積み重ねが、お子様の将来の歯並びと健やかな心身を育みます。

りえこ歯科・矯正歯科クリニックでは、埼玉県加須市や近郊の皆様に、矯正治療とあわせて咀嚼機能や食習慣に関するご相談も承っております。お子様の噛み方や食べ方について気になることがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

お子様の健やかな成長のために、今日から一緒に取り組んでみませんか?

【関連リンク】

監修歯科医師

りえこ歯科・矯正歯科クリニック

院長 大澤理恵子

【経歴】 

1993年明海大学歯学部卒業

明海大歯科矯正学講座

大澤歯科医院(1995年~2014年)

田沼歯科医院

昆歯科医院

【所属学会・資格】 

日本矯正歯科学会会員

東京矯正歯科学会会員

日本病巣疾患研究会会員

エグゼクティブコーチング協会認定プロコーチ

米国NLP協会認定マスタープラクティショナー

口育研究会会員オーラルマネージャー

日本予防歯科学会会員

日本ヘルスケア歯科学会会員

大澤理恵子院長